もっ~と!大人のジャーマン

吹き矢3級の戯言雑記 (リンクは御自由にどうぞ)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

静かに響く声が これが最後と 白いブラウスが涙に濡れた

 
 みんなが新番の話題でワイワイしているのを横目に、延々と聖闘士星矢のDVDを視聴する簡単なお仕事中(挨拶)
いやまあアスガルド編限定で視聴してるわけですが……アルデバランのかませ牛さが素敵なのはどのエピソードも変わらない。ある意味便利に愛されてるよなァ……アルデバランw


・【感想】【ラノベ】終わる世界のアルバム
終わる世界のアルバム終わる世界のアルバム
(2010/10)
杉井 光

商品詳細を見る

 ぼくたちの世界は、ゆるやかに終わろうとしていた。
人間は、なんの前触れもなく消えるようになった。痕跡一つ残さず、周囲の人々の記憶にさえ留められず。
ただ、ぼくだけが、消えた人を忘れられずにいた――写真を残すことによって。
そして中学卒業を控えた冬の日、ぼくは教室で彼女の存在に気づく。
水島奈月。知らないはずなのに、よく知っている。忘れてはいけないはずなのに、忘れていた女の子。
残り少ない時間の中で、ぼくと奈月はもう一度、お互いを確かめ合い始める。
終わりゆく世界で静かに響く、ささやかな恋の物語。


 杉井光氏初のハードカバー単行本は、ゆるやかに終末を迎えつつある世界を生きる少年と少女描いた切ない物語。これまでの杉井氏の作風を周到しながら、これまでのようなビターでも甘くでもない切なさ……言うならば、ただひたすらに透明で切ない物語。端的に物語を語るならば帯文にある"本当に大切だった人、憶えていたいですか、それとも、忘れたいですか?"の一文に集約される。あまりにも作品の骨子を的確に表現しすぎていて、些か穿ち過ぎかな、と思わなくもないけども、この煽り文以外になにか別の表現があるの? と訊かれたら、他に思い浮かばない。なぜならばこの一文が全てだからだ。

 自身のblogで杉井氏は、映画にできて小説にできないことは色々あるが、最大のひとつは、エンドロールであり、どうにかしてこのエンドロールを再現できないだろうかと考えた末の、回答のひとつが、この小説だと述べていますが、なるほどなと感じました。前提としてこの物語はどうしようもない。ゆるやかながら確実にせまりくる終末をどうにかすることも、抗うことも出来ない。そもそもにして、マコトと奈月の物語自体が終わってしまった後の物語といえる、それこそエンドロールのように……。ひどく哀しい物言いをするならば、流れ零れてしまった後の"残滓"の物語。故に、この物語は失われてしまったマコトと奈月の蜜月を語らない、語られるのは終わってしまった後の二人のエンドロール。どうしようのないものはどうしようもなく、終わってしまったものは覆せない。ならばこの物語は諦めを享受するしかない物語なのか? この世界の果てから果てまで満ちてる条理と不条理の中で翻弄されるだけの物語だったのか? 否ッ!!と言いたいところだけども、正直よくわかっていないのが本音。自分が大切な人を失った経験をしていれば、また違った感想でも述べられたのかもしれないけれど、幸いなことに自分にはその経験がないので、実のところ物語を正しく受け止めることはできないのかもしれない。

……船が港に着いて錨をおろしたら、水底に刺さりますよね。船がいなくなった後でも、錨の痕は残りますよね。それがいやなんですよ、ぼくは


 マコトのこの台詞を読んだときは、なんて青い意見を漏らすムカつく野郎だと思ったものだけど、この台詞のすぐ後で明かされる彼の立ち位置ならば、至極当然の言葉でしょう。なんの前触れもなく人が消え、残された人の記憶からも消える……こんな世界で限定条件付き(彼がカメラに写した人間のことを彼は忘れない)とはいえ、忘れることができないマコトの立ち位置は過酷だ。そして嫌だと言いつつも彼は、忘れないように銀塩フィルムに消えていく運命を焼き付け収集する。船がいなくなった後の水底の錨の痕を抱え続ける。写真を撮ることを止めて、他の人達のように全てを忘れて生きることは出来る、だけど出来ない。大切だったかも知れないなにかを忘れたことさえ忘れてるならばともかく、大切だったかもしれないことを忘れてしまっているなんてことを知った上で、生きれるほど人は強くはなれない。

きみは、みんな忘れろって簡単に言う。でもね、たとえ水島奈月という名前も、顔も、声も、みんな忘れたとしてても、消えない傷がいくらでもある。忘れないことも選べる――その可能性を抱えているだけで、ぼくは磨り減っていくんだ。だれか大切な人の記憶を、ぼくは捨ててしまったのかもしれない、そんな想いを引きずり続けるんだ。もうそんなのはいやなんだよ。


 選択肢があるということは、時に残酷だ。選ばなかった選択肢の先になにがあるのかはわからないし、ひょっとすればなにも選ばないという選択が正解だったのかもしれない。その痼りは悔恨として確実に残る……どの選択肢にも正解がないかもしれないのに。このマコトの思考をワガママだと非難することはできない。

わたしがつらいのは、あなたがいつまでも憶えているのかもしれないってことだけ。わたしが消えた後も、大丈夫、大丈夫、なんて自分に必死に嘘をつきながらずっとずっと引きずっていく。そんなのはぜったいにいやだった


 残される側には残される側の言い分があるように、残す側には残す側の言い分がある。真意的には消えずにマコトとずっと一緒にいたいだろうけども、それは許されない……なぜならば彼女は残滓であり、エンドタイトルまでの一時に流れるエンドロールだから。実のところ奈月の言い分は"貴方のことを愛しています。でも、私を好きにならないで下さい"って言っているようなもの。しかし彼女にはそれしか方法がなかった、彼女の抱える相反する願いを叶えるには……。奈月の蘇った束の間をマコトと一緒にいたいという願いと、自分が消えてしまった後、自分という存在がマコトの悔恨になるのは絶対に嫌だという願いは、完全に相反している。本当に叶えたいのであれば、マコトを見守れる位置で彼を拒絶し続けるべきだったのだろうけども、それができるならば恋なんてしない。結局は似たもの同士なんだよなァ……この二人。

だって、ぼくは知っている。人から哀しみを奪うことはぜったいにできない。心の中で響き続けるからだ。それなら、ぼくはもう、他のだれかに代わりに泣いてもらうなんてしたくなかった。それはぼく自身を灼いて生まれる熱、ぼく自身の中で波寄せる海だからだ。


 きっとこの台詞が、"本当に大切だった人、憶えていたいですか、それとも、忘れたいですか?"に対する、一つの答えなんでしょうね。哀しみは消せない、それは響くから……響くということは心が震えている証明。心が震えるということは生きているいうこと。大切な人がいなくなってしまうということは哀しい。それは想像でしかないけれども、身を切るような痛みが伴うのだろう。通りすぎていく時間にその想いが薄れていくことにすら痛みを感じて、時には完全に忘れたいと願うほどのことかもしれないけれど、もし大切な人を無くしてしまったことを忘却できる世界があるとするならば、人が人に対して涙を流す必要がない世界があるならば、それはなんて枯れ果てた世界なんだろうと思う。その哀しみも、苦痛も、不安も、後悔も、全て全て自分のもの。世界と接して、自分の中に生まれてくる熱であり波よせる海。心と呼ばれる奔流。神様だろうが誰だろうが人から心を奪うことはできない。彼等が世界の終わりの場所で辿り着いた地平は、そんな生命賛歌なんだと思う。

人から音楽を奪うことはできないけれど、音楽から人を奪うことはできる。だれの耳にも届かない音楽は、音ですらない。

なにがどれだけ消えちまっても、忘れちまっても、歌うやつがいて、聴くやつがいて、それをラジオがつないでいてくれれば、音楽は死なないんだ。


 抗えない運命というものは絶対にある、哀しいけれども世界が"熱力学第二法則"には抗えないように……いつか全ては消え去るだろう。だからと言って、全てがどうせ消え失せてしまうからといって運命を享受する道理はない。歌うやつがいて、聴くやつがいれば音楽は死なないように、knockin' on heaven's doorが様々な人にリメイクされて歌い継がれているように、全てが無くなるその瞬間まで抗うことはできる。心さえ響いているなら生きていける。

 何度も語っているとおり、この物語は残滓の物語だ。物語が始まった時点で、すでに遅すぎた物語だと言える。もしももう少し早ければなんてifの話に意味はなく、マコトと奈月の物語に、この結末以外のエンドはあり得ない。そしてこの物語は残滓でありながら、この終末の世界で大切な人を失ったマコトの心を満たす哀しみによって否定される。涙が流せなかった少年の頬をつたう涙は残滓では決してない再生の象徴。

スポンサーサイト
[ 2010/11/13 19:03 ] ラノベ | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

プロフィール

ふきにゃ

Author:ふきにゃ
エロスとカオスと人外ロリをこよなく愛するマシーネン・アーリア人。

ついったー
<
カレンダー
09 | 2017/10 [GO]| 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

最近の記事一覧 カテゴリ一覧 コメント一覧 トラックバック一覧 プロフィール リンク一覧
[カテゴリ]
WEBコンサルティング・ホームページ制作のバンブーウエイブ
お買い物メモ
アソシエイトじゃないよ。単なる買い物メモ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。